認知症と睡眠
同じことを何度も言う、忘れ物や探し物が多くなる、簡単な計算や仕事に時間がかかるといった症状があらわれる「認知症」。厚生労働省の推計によると、65才以上の高齢者の約5人に1人が認知症を発症するといわれています。睡眠不足や睡眠障害が認知症の発症リスクを高めるともいわれています。今回は、認知症を引き起こす睡眠習慣についてご説明します。
・睡眠時間
睡眠時間が6時間以下だった人は7時間の睡眠をとる人に比べ、認知症のリスクが30%高かったという研究結果が出ています。睡眠時間と認知症リスクの因果関係はまだ不明ですが、判明していることもあります。
アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβは睡眠の質が悪いとたまりやすいとされます。さらに充分な睡眠を確保すれば、脳内にたまったアミロイドβを減らせるという研究報告もあります。
質のよい睡眠は認知症を予防するだけではなく、日中に活動するためのエネルギーもチャージしてくれます。しっかり睡眠がとれないと、日中の活動量が低下し、疲れやすくなって、活動意欲の低下にもつながるため、最低7時間は睡眠時間を確保するよう努めましょう。
認知症を引き起こす睡眠習慣
・寝返りしやすい軽い寝具を選ぶ
睡眠の質を高めるには寝具選びも重要です。ポイントは寝返りがしやすいかどうかです。かけ布団が重すぎると寝返りがしづらくなり、睡眠が阻害されます。羽毛など、軽くて体にフィットするタイプがおすすめです。
・寝る前に水を飲むのが習慣、寝る1時間前までに飲む
寝る前にコップ2杯以上の水を飲むと、トイレなどで起きる確率が上がり、睡眠不足を招きます。睡眠時間を阻害する原因を減らすためにも、水分を摂るなら寝る1時間前までにコップ1杯だけとしましょう。
・暗ければ暗いほど安眠に
豆電球の光はまぶたを通して直接目に入るので消した方が安眠できます。暗闇が苦手なら、間接照明を床に置いて使用すると目を刺激しないのでおすすめです。寝室の温度は22~24℃、湿度は50~60%と少し涼しめの空間が眠りやすい環境です。
・寝る前は必ずスマホをチェック
眠くなるまではと、つい布団の中でスマホをチェックする人も多いと思います。しかし、入眠前の刺激は脳や体に悪影響を及ぼします。スマホやタブレットから発せられるブルーライトによって、脳が日中だと錯覚し、睡眠に誘うホルモンのメラトニンの分泌が抑制されてしまいます。脳が覚醒して、たとえ眠ったとしても睡眠が浅い状態になってしまいます。
・30分の昼寝で頭スッキリ
日中の眠気が強い時は、30分ほど寝た方が、夜の睡眠の質は上がります。昼食後にお茶やコーヒーを飲んだら、椅子に座ったまま軽く目を閉じてみましょう。カフェインの覚醒作用で30分後ぐらいに、スッキリと起きられます。頭がクリアになって午後も活動的に動けます。
・お風呂は入眠前に
入眠時は、体温を下げる必要があります。そのために鍵となるのが入浴です。入浴前よりも深部体温が低下したときが就寝のタイミングとなるのですが、それは入浴後30分~1時間前後に訪れます。シャワーでは体が深部まで温まらないので、入浴は就寝前に湯船につかるのが理想的になります。
・予定がない日は一日中パジャマで過ごしている
寝る前にパジャマに着替えるという行為には催眠効果があります。着替えることで睡眠へのスイッチが入ります。
しかし、1日中パジャマで過ごし、それが日常化すると催眠効果が薄れ、パジャマでいても睡眠スイッチが入らず、寝つきが悪くなってしまいます。
結果、睡眠のリズムが崩れ、認知機能の低下をもたらします。起きたらとにかく着替える習慣をつけましょう。
・起きたら太陽の光を浴びる
睡眠を促すホルモンのメラトニンは暗くなると増え、明るくなると減るため、睡眠と覚醒のスイッチを切り替えるには明るさが大切です。起床後は5~10分ほど太陽の光を浴びましょう。このとき、直射日光は避けつつ目から光を吸収するよう意識してください。脳が覚醒し、夜も入眠しやすくなります。